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毒蜜喰らわば
第13章 別れも幸せも成就
*
イルミネーションに彩られた表参道のケヤキ並木をレストランから見下ろしたのは、
今日が初めてかもしれない。
彼だけじゃなく他の誰ともこの景色を上から眺めたことはないな、と
茂から目を反らして少しの間光の粒に見入ってしまった。
「きれいだね。僕初めてだよ、こんな特等席からイルミネーション見たのは」
「私もよ。クリスマス時期のこのあたりはいつも混雑しているからあえて避けていたし」
茂も私も美しい町並みに気を取られて、待ち合わせ場所で顔を合わせた時の
妙な緊張感はいつの間にか忘れてしまった。
「まだクリスマスには早いけどせっかくだから気分だけでも味わおうか」
茂はシャンパンのハーフボトルを頼み、
私が一番安いコース料理を選んで注文した。
「そういえば・・初めて食事した時のフレンチも美味しかったな・・
鹿肉も初体験だったし。楠木さんとはいろんな初体験ができて楽しかったわ」