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毒蜜喰らわば
第5章 偶然は必然の前ぶれ
時間はいつも駆け足をしている。
あっという間に金曜の退社時間を迎え、
今週も頑張ったなと自分を労うつもりで寄り道をして帰る。
地下鉄で表参道まで行き、わざわざ人の多い場所をあてもなく歩く。
明日は休みだからという気の緩みが、
不快な人ごみさえも楽しく感じさせてくれるのかもしれない。
買物が目的ではないが、ピカピカとした高級店のウィンドウをのぞいては
ちょこっと中へ入ってみる。
店員が声をかけてくる前にさっと外へ出る。
何軒かそれを繰り返すと一人で思わず吹き出してしまう。
なにやってんのよ、私ったら。
買えないなら見なきゃいいじゃない、なんて、
磨かれたガラスに映った自分に笑いかけた。
その時・・
「あの、こんばんは」