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毒蜜喰らわば
第6章 dejavu・・?
初めて一緒に食事をする相手なのに、
緊張するとか気負うだとかという気持ちはほとんど湧き起こらなかった。
それよりも、どこか懐かしいというか、ずっと前にもこうして二人向き合って、
お酒を飲んだことがあるような気がしてならなかった。
・・まさか、前世で恋人同士だったとか?・・
なんて小説家みたいな戯言を心の中で呟きながら、茂の口元を見つめていた。
鹿の肉を口に運び、少し出した舌の上に乗せてからゆっくりと咀嚼する。
唇の端に赤ワインを使ったソースが涙のように滴るのを見た瞬間、
またもや私の中心の泉は湧水のように体中を潤わせた。
その色に魅せられて、彼の中に吸い込まれていきそうな、
妙な感覚・・
「やっぱり抵抗がありますか?鹿肉は」
覗き込むような瞳は、気遣いにあふれている。
私が無理しているんじゃないか、そう心配しているように見える。
私は、いいえと首を振りながら皿の上のお肉を小さく切って口に運ぶ。
噛んだ瞬間、想像しないほどの柔らかさに目を見開いた。
「うわぁ、柔らかくて・・美味しい!」
初めて口にする食べ物に対する不安は一気に消え、
そして初めて食事を共にする異性の前とは思えないような食欲を見せてしまった。
料理の皿の上はきれいに片付き、マダムがデザートのメニューを持ってきてくれたが、
茂は「別の場所に行ってもいいですか?」と小声で聞いてきた。
その言い方はなんだかウキウキとした弾む感じで、ちょっと不思議な感じもしたけど
まだ一緒に時間を過ごせるのだからと私は小さく頷いた。