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毒蜜喰らわば
第8章 禁断の扉が開いた・・
風が吹いた時にだけ水面が揺れるのが雅治への気持ちなら、
茂に対する気持ちは寄せては返す波に例えることができる。
蛍庭園で体を寄せ合ったあの日から、オフィスで顔を合わせる私達の目じりには
喜びの皺が浮き出るようになった。
おはようございます、お願いします、また来週・・
どうってことない挨拶の言葉だけでも私は体中が潤う感覚を味わえる。
この潤いを実際に肌で感じてみたい・・
はっきり言えば、彼と体を重ねてみたい、と思う時もある。
でも、いくらマンネリの間柄とはいえ私には雅治がいる。
茂にも恋人がいる。
簡単に壁をよじ登って超えてしまう事は出来ない。
週に一度顔を合わせるだけの、ささやかな幸せだけで今は十分だと思っている。
また逢ってください、とあの時茂は懇願するように囁いた。
また、がいつになるのかわからない。けど、いつかあるかもしれない、という
希望は繋がっているのだ。
またいつか、2人きりで会う日を信じて私は日々を穏やかに過ごしていた。