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毒蜜喰らわば
第9章 めずらしい人との出会い
駅で雅斗と別れ、電車に乗り込むとさっそく咲枝は大きくため息をついた。
「あ~あ、なんか彼はダメっぽいわねえ。あの口ぶりじゃあ、
彼女候補がいるみたいじゃない?結構好さげだったんだけど・・」
今日の出会いに期待していただけに、咲枝の落胆ぶりは
丸めたその背中が物語っていた。
「でもさ、一度ダメだったくらいでめげてちゃいかんよね。
次がんばるわ!・・美智?ねえ聞いてる?」
「え?あ、ごめん、聞いてる聞いてる」
「気にしてんの?さっき言われた事」
「ううん、ちょっとびっくりしただけよ」
イタコの孫が見通した、私の祈る姿。
見通されたのがそれだけならいいけど、と急に茂のことを思い起こした。
まさか彼との逢瀬までは見えることはあるまい。
そう願いたいものだと
車窓に反射する自分の顔をじっと見つめた。