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梅の湯物語
第9章 梅の湯のお梅さんになったわけ
梅の湯の煙突から煙が上がる。
道端に座り込んでいた人たちがその煙に惹き付けられるように梅の湯に集まってきた。
「お梅ちゃん 風呂に入れるのかい?」
松吉が孫の手を引いてやって来た。
「ええ。どうぞ。
存分に汗を流してくださいな」
お梅は笑顔で迎えた。
「こりゃありがてぇ」
松吉はちょっとバツが悪そうに
「銭がねぇんだが」
といったが
「銭なんてみんなありゃしませんよ。
それにね、ここは天井もないしあっちこっち穴だらけで銭が貰えるような銭湯じゃありませんから。
梅の湯さんが戻ってきたら銭を払ってくださいな」
お梅が笑って言うと松吉は涙を流しながら
「ありがてぇなぁ」
と呟いた。
松吉の様子を見ていた他の町民たちも
「私らもいいかい?」
と遠慮がちに言ってくる。
「どうぞどうぞ。
ゆっくり風呂に浸かってくださいな」
梅の湯はあっという間に満員になった。
湯船はすぐに真っ黒になったが誰もそれを気にするものなどいない。