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梅の湯物語
第13章 関西からのお客さま
「何年ぶりだろうね...」

お梅は汐さんにお茶と最中を差し出す。

「かれこれ20年以上になりますかねぇ」

お茶をすすりながらお梅は遠くを見るように新緑の生い茂る庭の梅の木を見つめた。

「...もうそんなになりますかねぇ」

「叔父の墓参りに行ったら、お墓の前で立ち尽くして泣いているお梅さんを見たのが初めてですから」

「そうでしたね...」

庭からの風が心地よく頬を撫でる。
お梅は膝の守さんを撫でていた。

「あのあと大阪にはおいでになりましたか?」

お梅は静かに首をふる。

「私のようなものがそう何度も行くわけにも...
 当人同士は一緒になりたいと思っていましたけどね
 あちらには一度もご挨拶にも行けずじまいだったから」

お梅は小さく溢す。

「そうでしたか。
 叔父といっても私は会ったこともなくて。
 私が生まれたのはずっと後でしたから。
 帝大にいくと言って家を離れて
 そのあとは戦地に向かってそのままと聞きました」

お梅は静かにお茶をすする。

汐さんとはあの暑い夏、蝉時雨が降り注ぐあの墓地で初めて会った。
行くことはないだろうと思っていたあの人の、あの人の家族が眠る墓所。私のようなものが行ってはいけない。だけど生きているうちに一度だけ...
そう思ってお盆も終わった頃にあの墓所を訪れた。

まさか人に会うとは思わずに...。


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