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梅の湯物語
第13章 関西からのお客さま
翌朝...

あれだけ飲んだにも関わらず、良太さんは5時には起きていそいそと出掛けていく。

「どうしたんです?こんな早くから」

布団の中から汐さんが声をかけると

「梅の湯の一番風呂を炊きに行くのさ」

嬉しそうに笑って出ていった。

身支度を調えて汐さんが梅の湯の裏手に回ると、良太さんが健二と嬉しそうに薪をくべている。

「あら、梅の湯さんはまだ薪で炊いているんですか」

驚いた汐さんが声をかけた。

「そうなんだよ。
 懐かしいだろぉ。
 ゆうべ、健二さんから話を聞いて嬉しくてね。
 子供みたいにうきうきして早く目が覚めたよ」

本当に楽しそうな良太さんに汐さんは優しく微笑む。

ああ...昔は波の湯もこうやって薪でお湯を炊いていた。汗だくになって薪を割っていた良太さんの姿を昨日のことのように思い出す。
汐さんは楽しそうに薪をくべる良太さんの姿をしばらくの間眺めていた。


ふと視線を外した汐さんの目に渡り廊下が見える。
近づいてみれば、年月を重ねて艶を出した木の風合。そっと柱に触れてみる。柔らかな温もり。大切に手入れされてきたことが伺い知れる。

そこではお梅が丁寧に床や柱を磨きあげていた。

「おはようございます」

汐さんはお梅に声をかけた。

「あら、汐さん。
 もっとゆっくり寝ていればいいのに」

顔をあげたお梅が汐さんに答える。

「年寄りなんで目が覚めてしまいました」

「そうかね」

「お手伝いしましょうか。というか、やらせてもらえませんか?何にもしないと体がなまってしまって」

お梅は頷くと

「バケツの中にもう一枚雑巾があるから」

「はい」

汐さんは渡り廊下に上がってバケツの中の雑巾を絞った。


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