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梅の湯物語
第7章 湯上がりラムネをご一緒に
「桜ちゃん、着いたよ」

雅人の甘い声が耳元で囁かれる。

桜はドキンとした。

雅人の行動ひとつひとつにドキドキさせられる。


...柏木さん
  どうしてこんなことするの?
  私の反応が子供だから面白がってるの?


桜は雅人に聞きたかったけれど
声に出す勇気がない


...彼女に見られたらどうするの?
  それとも彼女に見られても構わない程度にしか
  思われて ないのかな...

桜は涙が出そうになるのを必死に堪えていた。

何度か手を離そうとするけどその度にギュッと握られて離して貰えない。



雅人に手を繋がれたまま大学の門を潜る。

複雑な想いの桜の目に飛び込んできた景色は

「素敵...」

思わず呟いていた。

赤い煉瓦造りの校舎に緑色の蔦が絡まり、白い窓枠がコントラストとなって美しい景観になっている。

キャンパスの木々は少しづつ色付き始め、ため息が出る美しさ。

「素敵なキャンパス。
 都心にこんな景色があったんですね」

桜は初めて訪れたR大の美しさに心を奪われていた。

「綺麗だよね」

「はい」

「もう少し寒くなると紅葉がものすごく綺麗なんだ。
 俺、去年の学祭に来てあまりに綺麗でもう一度見たいって思ってこの大学受けたんだ。
 12月にはツリーも飾られるんだって」


「見たいな...」

桜が無意識に呟くと

「一緒に見よう」

雅人が笑って桜を見つめた。

桜は雅人の笑顔を見ているのが辛くて俯いた。





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