この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
梅の湯物語
第9章 梅の湯のお梅さんになったわけ
お梅が家の様子を見に行ってからまだ1日と経っていない。
昼間自宅から少し荷物を取り出して大八車に載せているとき、隣の梅の湯のご主人がやって来た。
「お梅ちゃん、荷物を引いて川口までいくのは難儀だね。気を付けてお行きよ」
人の良い梅の湯のご主人はにっこり笑ってお梅に話しかけてきた。
お梅は母からの預かりものの食料をご主人に渡す。
「いつもすまないね。
お母ちゃんに宜しくいっとくれ。
戦争が終わったらまた梅の湯に汗を流しにおいでよ。
坂下さんちは永年無料にさせてもらうからさ」
「ありがとう。
おじちゃん」
そういうとご主人はまたにっこり笑った。
「そうそう、お梅ちゃんにお願いがあってね」
ご主人は腰に下げた鍵を取り出した。
「この鍵を預かって貰えないかい?」
「え?」
お梅は鍵を見つめた。
「もう、東京も危なくなってきた。
供出で風呂も炊けないから私らも奉公人のツテを頼って疎開することにしたよ
明日かかあと一緒に行くことになった」
「そう」
お梅は少し寂しそうな顔をした。
昼間自宅から少し荷物を取り出して大八車に載せているとき、隣の梅の湯のご主人がやって来た。
「お梅ちゃん、荷物を引いて川口までいくのは難儀だね。気を付けてお行きよ」
人の良い梅の湯のご主人はにっこり笑ってお梅に話しかけてきた。
お梅は母からの預かりものの食料をご主人に渡す。
「いつもすまないね。
お母ちゃんに宜しくいっとくれ。
戦争が終わったらまた梅の湯に汗を流しにおいでよ。
坂下さんちは永年無料にさせてもらうからさ」
「ありがとう。
おじちゃん」
そういうとご主人はまたにっこり笑った。
「そうそう、お梅ちゃんにお願いがあってね」
ご主人は腰に下げた鍵を取り出した。
「この鍵を預かって貰えないかい?」
「え?」
お梅は鍵を見つめた。
「もう、東京も危なくなってきた。
供出で風呂も炊けないから私らも奉公人のツテを頼って疎開することにしたよ
明日かかあと一緒に行くことになった」
「そう」
お梅は少し寂しそうな顔をした。