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梅の湯物語
第9章 梅の湯のお梅さんになったわけ
お梅は母と一緒に持ってきた荒縄で自宅の敷地に縄張りをした。

「お母さん...」

お梅は梅の湯に視線を向けた。

焼け落ちた母屋を見つめる。


母子は頷き母屋の壁や柱をどかし始めた。


...もしかしたらこの下に


覚悟は決めていたが柱をひとつどけるたび
板を一枚めくる度に
いないでほしいと心が叫ぶ。

土が見えるとホッとして別の場所を探す。


「きっと疎開先へ行ったのよ」

母がそう言うとお梅は

「そうだね」

梅の湯の夫婦の遺骸はなかった。


「お母さん、まだ縄が余ってるから梅の湯さんのところも縄張りしていこう。
 きっとすぐには戻ってこれないと思うから」

「そうだね、そうしようか」

母子は縄張りを始めた。

何か話そうにも言葉もでない惨劇。

悔しさと悲しさとなんとも言えない空虚な気持ちがないまぜとなる。


気付くと涙ですべてが滲んで見えた。



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