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梅の湯物語
第9章 梅の湯のお梅さんになったわけ
お梅は週に一度、梅之木町へ様子を見に行った。

行くあてのない人たちが廃材を集めてバラックに住むようになっている。


新聞では今だ帝国軍の活躍を高らかと謳っているが、遠い異国で自分の大切な人がどんな凄惨な日々を送っているかなどお梅は予想だにしなかった。


いつしか一面の焼け野原だった東京は空き地に雑草が生え始めている。

そこに人の営みがあったことなど構わないように草が生い茂るようになっていた。


お梅は梅の湯に建てた案内を作り直していた。


“梅の湯の鍵 お預かりしています 坂上”


梅の湯のご夫婦はいまだ戻っては来ない。


ーー戦争が終わったらみんな戻ってくる

お梅は自分に言い聞かせていた。

ーーお父さんも大切なあの人も
  梅の湯のご夫婦も奉公人のみんなも
  すぐに帰ってくる
  そうしたら 梅之木町は元の賑やかな...



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