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FUJITAYA
第3章 手作りの気持ち
車では送ってやれないからと、最寄り駅まで一緒に歩いた。改札の近くまで着き、今日はありがとうございましたと言った時、藤田さんが少し真剣な表情で私を見ていた。
「鮫島さん、一つだけお節介してもいい?」
「…何ですか?」
「鮫島さんの編み物を始めるきっかけって、きっと今考えると辛いものかもしれない。でも、いつかは、それはきっかけに過ぎないって思えるようにしたいんだ。」
「……」
「だから、これからもFUJITAYAに来てほしい。編み物始めて、良かったと思ってほしいんだ。あと思うのは、自分のために編んでいるものが終わった時に、鮫島さんが誰かに送りたいと思うような人が心に思い浮かべばいいなって。それが俺だったら、もっといいなって、思う」
「え…?」
照れているのか少し視線を外して、考えといて、と言われたら、私も顔が熱くなってしまった。
だって、照れているってことは…好きとかそういうこと…?
「…感謝の気持ち……?」
「それも、もちろん受け取るけど、違うものもあればいいな…」
なんだか可愛らしい一面も見れることができ、藤田さんのことをたくさん知れただけで満足していたから、私は笑顔で、考えておきますと返し、改札に定期を通した。