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FUJITAYA
第3章 手作りの気持ち

「理由は2つだ。1つは会社を辞めたことで、店を継ぐ人ができたとおばあちゃんがこれ見よがしに継げ継げ、って猛アタックしたり、友だちやお客さんにまで俺を紹介しだして、逃げられなくなったこと。」

「先生、意外と強引ですね…」

「見た目によらずだろ?あともう1つは、俺にしかできないことをしたいと思ったから。」

「…?」

「これも捉え方によれば逃げたと思うかもしれないけど、あそこの職員さんってすごいんだよ。俺も子どもたちと一緒にいたい思いはあったけど、もうあの職員さんたちにしかできないことはあったから。編み物の一番の人になるためには、職員という形じゃない方がいいと思って、継いだんだ。」


 藤田さんがすごく温かさのある人であることは知っていたけど、そういう体験をしてきたことを知ると、この人にはまだまだ色んなことをもっと知れるような気がした。


「まぁ、それはきっかけに過ぎなくて、俺にしかできないことに辿り着くにはまだまだ先のことなんだって思うんだけど。今は目の前にあることを一生懸命にする。それはきっと編み物だけに限らず、どんなことにおいても大切だと思う。こうやって適度に休憩しながら、ね。」

 藤田さんがそう言うと、今度は鮫島さんの話が聞きたいと言って、会社のことや、地元のこと、大学生の時はどうだったか、を聞き合ったりした。
 私は大した経験もせずにこの年になってしまったから、藤田さんのように語ることはできなかったけど、それでも笑顔の彼を見て、楽しいなと感じていた。



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