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FUJITAYA
第5章 送りたい相手

「まぁ、おせっかいだから、気になって仕方がないんや。鮫島さんは今しんどくないか?」

「…少し考えるとしんどいです…、そもそも私なんか要さんに見合う人ではないですし。…それより、今要さんがどう思っているかが聞けないことが、辛いです。やっぱり、怖くて…」

 先生の相槌が心地よくて、心が解けていくように思えた。私はやっぱり要さんのことが好き。それは変わらない。
 気持ちを知るのが怖い、会いたくないって思いが強すぎて、本当の肝心な好きっていう気持ちを消し去ろうとするところだった。


「一つ、商売だとも思われるものを提案するとな、こういう時のプレゼントじゃないかな」

 先生は嬉しそうに笑って、完成したマフラーを触った。


『自分のために編んでいるものが終わった時に、鮫島さんが誰かに送りたいと思うような人が心に思い浮かべばいいなって。それが俺だったら、もっといいなって、思う。』

 要さんが言ってくれた言葉を思い出し、先生と顔を合わせ頷いた。


 今は要さんに会うときじゃない。どれだけ思いを込められるか分からないけど、私は先生とどれを編むか決め、毛糸を多めに買い、車の通りが少ない道を選んで、家に帰った。


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