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FUJITAYA
第1章 マフラーのプレゼント
いい大人が、手作りなんて…しかも、これカシミアだから高いんじゃない…
我に返ってそう思ったのが、ご飯を食べたり、風呂に入ったり、一通りの寝る準備ができた時だった。
やっぱり失敗かな…そもそも、これ編めるの…?
店員さんが本を見て一通りデザインを教えてくれた。私の中では極々シンプルに、何も柄のないものを想像していたが、店員さんはアラン模様をすごく押していたので思わずそれで…と決めてしまった。
私が勝手に編むんだから、好きに編んでいいのに…初心者は本当に初心者で、結局その日は1段目も編むことができないまま、寝てしまった。
「今日、俺と同じ年ぐらいの女性が来たよ。」
「ほぉ。クリスマスプレゼントかね。経験者かい?」
「ううん。初めて。でも、きっと彼女が送りたい人には届かないと思う。」
「…何か悪いことを企んでる。」
「違うよ。まったく、俺は悪くないよ。助けてあげたいと思ってるんだから。」
「へぇ。あんたがそう思うなんて、珍しいこともあるんだね。」
にやにやと笑っているばあちゃんを横目に、明日の準備を始めた。
だいたいこの店に来る人は、ウキウキわくわくしているか、緊張して固まっているかだ。まぁ、ばあちゃんと話したくて来る常連の年配の人もいるけど…
だから、疲れ切った顔で、自信なさげな雰囲気で、彼氏という言葉に困った反応を見せられた時、何となく望んでいない恋をしているんだろうなと思った。