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FUJITAYA
第2章 アラン模様の意味
そもそも編み物初心者は最初にどう編んでいけばいいかも、針をどのように持つかも分からなかった。
本を見たり、ネットを見たりしながら、ああでもない、こうでもないと言いながら、気付けば1週間経っていた。
仕事もあり、なかなか進まないものの、編んでいる間は集中できて、成本さんのことを深く考える時間も減り、気持ち的に楽になっていた。成本さんのためのプレゼント、喜んでくれるかなぁとか考えていたのは編むまでの話。今では絶対自分で編んでやる…!と燃えていた。
裏編み、表編みはできるようになっていたが、よく分からない編み図の記号をみて止まってしまった。多分、棒と棒とが交わるところだろう。見よう見まねでやってみたが、糸が切れそうで怖かったので、これはもうFUJITAYAに行こうと思った。
初めは編み物の先生がいることに有難いと思っていたが、あの男の店員に会うのが気まずくて、行けずじまいだった。
笑顔が印象的な男性だった、身長は成本さんよりも高かったかな…。本当にそれだけしか印象に残っていない。でも会うのは気まずい。
きっと成本さんのことをためらった記憶があるからだ。でもせっかくできるようになってきたなら、完成させたい。成本さんのことはできるだけばれないように、先生に教えてもらいに行こう。
そう思い直して、仕事用のカバンの中に編み物セットを入れて、眠った。