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行こうぜ、相棒
第10章 This is the time
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「でも、マダムはね、やめろっていうのよ」
冷や奴に醤油をかけながら、リエは言う。
「『あの男はやめなさい。あなたを不幸にするわ』」
リエはマダムの太い声を真似しながら言った。
「あのひと、彼のことをなにも知らないのにね」
「『客商売は人をひと目で見抜く力がいるのよ』」
またもリエは、マダムの声色を真似た。
ふふ、とエリは笑う。
「あの人が言いそうなことね」
「心配してるのよ、ああ見えて」
「わかっているわ。でも、大丈夫よ」
「悪い人じゃないのね?」
「不思議な人よ」
妹の質問に、エリは身体から力を抜いて答えた。
「リ子にしろマダムにしろ、どうしてそんなに私のことを気にするの?」
「エ子が心配だからよ」
「私ももう33なのよ」
「よく知ってるわ。私、あなたと誕生日が一緒だから」リエは皮肉げに笑った。