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行こうぜ、相棒
第12章 Up Where We Belong

「ねぇ、宏行?」
あの時から、エリは彼を名前で呼べるようになった。
「ん?」
「飛行機、乗り遅れちゃったね」
あはは、と柏木は笑った。
「それより大事なことがあったからな」
エリの微笑が深まる。
「あの時、、怖かったんだ。本当は」
柏木が、ポツリと言った。
「怖かった?」
「ああ、この街へ来るのが。戦場に行く時はいつもそうさ」
そうなんだ、とエリは思う。
彼は、怖がっていたんだ。
「そういう時は、無性に誰かを抱きたくなる。エリと最初に会った時もそうだ。真っ暗じゃなくても。部屋の照明のなかでも。恐怖に自分を見失って、誰かの肌が恋しくなるんだ」
「――それは」
エリは言葉を失った。
「ああ、あの時は二度と会わないと思っていた。まさか君が俺を見つけ出すなんて、考えもしなかったよ。でも…」
一瞬、彼は言葉に詰まった。

パタパタパタ
パタパタパタパタパタ

電話の向こうで、機関銃の音が聞こえる。乾いた音が。遠い世界の、でも大切な人のいる部屋の向こうで。

と、柏木とのビデオチャットの画面に、割り込み電話のサインが現れた。リエのアイコンが表示される。同時に《緊急》のサイン。

「待って。妹から電話なの。このまま切らないでいて」

エリはワーカムを操作して、回線をリエとのものに切り替える。
「お姉ちゃん、テレビを見てる?」
リエは音声だけのモードでエリに話しかけてきた。
「何かあったの?」
「すぐつけて。NHK」
リエの緊迫した声に、エリはすぐに居間のテレビの前に戻った。リエは回線を切った。



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