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行こうぜ、相棒
第8章 Walk Between Raindrops

新市街の教会で行われた両親の葬儀の後、妹のリエは当時の恋人に肩を抱かれながら泣き崩れるようにその場を去った。
喪主であるエリは気丈に市の有力者が集う参列者への挨拶を済ませた後、ここへやって来た。
裏の通用口から店に入ると、給仕長は何も言わずに厨房の奥へ通し、折り畳みのパイプ椅子に座らせて温かいスープを飲ませてくれた。
「いつでもここへ戻ってきていいのよ。ここがあなたの家なのよ」
フロアの仕事の合間に顔を出してくれたマダムが、エリに声をかけた。
ボロボロとこぼれる涙の味と、温かなスープが混じって、エリにとっての忘れられない塩辛い味になった。
その数年後。
当時やっていた仕事で大きな賞を取ったことがあった。授賞式の会場で祝福の嵐を受けた後、このビルにリムジンで乗りつけた。肩の大きく開いたドレスのまま、店の奥のアップライトピアノの上にクリスタルのトロフィーを置いて、何時間もピアノを弾き続けた。客も、給仕達も、マダムも、エリとその歌うようなピアノに酔った。
狼藉を働いた少女時代を過ぎ、分別もついた大人になっても、エリはこの店の子どもだった。

