この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘い時間は2人きりで
第21章 冷たい視線
そういえば、最近茜さんの様子がおかしかった。
黙り込んだかと思ったら、急に饒舌になったり…
付きまとわれてて、それで悩んでた?
「何で、俺に言わんかったんや…」
「私は『山岡くんに言った方が良い』って何度も言ってたけど、茜は『ツアー中だから、余計な心配かけたくない』って…」
茜さんなら、そう言いそうやけど…
「そんな気遣いせんでもいいのに…」
病室に入って、茜さんの左手に触れる。
左腕にも包帯が巻かれ、唇の端が赤く滲んでいた。
「茜さん…」
「今は痛み止めを打って眠ってるけど、さっきまでうわ言のように山岡くんのこと呼んでたの」
ベッドの傍にしゃがみ込んで、両手で茜さんの手を包み込んだ。
「茜さん」
「……」
「ごめんな、遅くなって…」
俺の手を弱々しく握ってくれた。
それを見て、犯人に対して強い怒りを覚えた。
茜さんをこんな目に遭わせやがって…
「山岡くん…私が言うのも何だけど、相談しなかった茜を怒らないであげて欲しいの。茜なりに気を遣ってたから…」
「分かってます。俺が怒ってるのは、大事な彼女に大怪我負わせた犯人にですよ」