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甘い時間は2人きりで
第25章 不安を打ち消す存在

「落ち着いたか?」

どのくらい抱き合っていたのだろう…
涙が収まっても、お父さんの腕の中が心地良くて、ギュッと抱き付いていた。

春人とは違った温もりを感じられた…

「うん。お父さんごめんね…」
「謝るなよ。泣くのを我慢するのも身体には悪いからな…そうだ、明日は久しぶりに近所の洋食屋に食べに行くか?」
「あそこってまだあったの?」

その洋食屋さんは、私が小学生の頃から通っていた老舗のお店。
20年経つから、ご主人も年だと思うけど…

「他の店で修行した息子さんが継いだんだよ。今も味を守り続けてて、たまに親父さんも料理をやってるよ」
「行きたい、けど…」
「…近所だから歩きになるが、皆が居るから大丈夫だ。もし辛くなったら、後でパパを殴れ」

その言葉に、流石に父親は殴れないと笑った。

「…茜、お前にはパパが付いてるし、山岡さんも居るんだ。辛くなったら頼れよ。ママも茜のことを見守ってくれてるからな…」
「ママ…」

チェストの上に置かれたママの写真を手に取った。
桜の木の下でニッコリと微笑んでいるママの写真は、お父さんのお気に入りの1枚。

「美弥子(みやこ)…茜のことを守ってやってくれ…」




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