この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘い時間は2人きりで
第30章 春人の異変

報告が終わると同時にギターをかき鳴らすと、客席から歓声が上がった。
春人が歌い始めてしばらくすると、秦野さんがポツリと呟いた。
「あいつ…最近の中で1番良い顔して歌ってるな」
「えっ?」
「皆にポリープの事を話すのはやっぱり怖かったんでしょう。『否定されたらどうしよう』と…実際言ってみたら、お客さんの反応は肯定的だった。恐怖という重りが無くなったことで、春人も安心したんでしょうね…」
ステージを見つめながら話す秦野さんもどこかホッとしたような表情をしていて。
「もし春人がしょげたままだったら、どうしてたんですか?」
「…言葉で動かなかった時は春人の尻を蹴飛ばしてでも復帰させましたよ。あいつも一応プロですから」
ステージ上の春人は、半日前まで深く落ち込んでいたのを微塵も感じない程、ステージ上でカッコ良く歌っていた。
「…まぁ、春人が唯一言う事を聞くあなたには敵わないですが…」

