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花菱落つ
第2章 真田源五郎
「その……見知らぬ者と交わるのは嫌ではないのか」
務めとはいえ、見ず知らずの男と房事を繰り返す遊女まがいの行為を好む少女などいるはずもない。凪のような若い少女には酷な務めに思えた。
「我らは『ののう』でございますれば」
だが凪は事もなげに言ってのけた。毅然と顔を上げ、源五郎を真っ直ぐに見つめた。
「務めのため見も知らぬ男とまぐわう我らを、真田様が汚らわしいと思われても致し方ございません。ですが、真田様が戦で剣を取り戦うのと同じく、我らは閨の中で戦をするのです。私は千代女様のため、そして武田のため、身も心も捧げたのです」
「どうしてそこまで……」
「千代女様に拾っていただかねば、私はとうに死んでいたでしょう。『ののう』のほとんどがそのような者なのです」
源五郎には「ののう」のが千代女への忠誠を盾に使われる、体のいい遊女のように思えた。汚らわしいとは思わなかったが、凪が憐れだと思った。
務めとはいえ、見ず知らずの男と房事を繰り返す遊女まがいの行為を好む少女などいるはずもない。凪のような若い少女には酷な務めに思えた。
「我らは『ののう』でございますれば」
だが凪は事もなげに言ってのけた。毅然と顔を上げ、源五郎を真っ直ぐに見つめた。
「務めのため見も知らぬ男とまぐわう我らを、真田様が汚らわしいと思われても致し方ございません。ですが、真田様が戦で剣を取り戦うのと同じく、我らは閨の中で戦をするのです。私は千代女様のため、そして武田のため、身も心も捧げたのです」
「どうしてそこまで……」
「千代女様に拾っていただかねば、私はとうに死んでいたでしょう。『ののう』のほとんどがそのような者なのです」
源五郎には「ののう」のが千代女への忠誠を盾に使われる、体のいい遊女のように思えた。汚らわしいとは思わなかったが、凪が憐れだと思った。