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花菱落つ
第4章 義信
「若いな。いくつだ」
「十二になりました」
義信は凪に年を尋ね、あっさりと頷いた。虎昌が義信の後を引き取り口を開いた。
「なに、特に用があったわけではない。あまりに熱心に掃き清めているので声をかけたのだ。お前はきっと良い巫女になるだろう。邪魔をした」
「いえ」
去り際に虎昌が凪を見て目を細めた。ただそれだけで厳つい印象があっという間に好好爺へと変わる。
「お前はなかなかの器量良しでもある。早くこの目でお前の神楽舞を見たいものだ。さぞや見栄えの良い舞い手になるに違いない。きっと神もお喜びになるだろうて」
「おい、虎昌。鼻の下が伸びているぞ。喜ぶのは神ではなくお前だろう。確かに美しい少女だが、十二ならば孫よりも年下ではないのか」
「義信様は相変わらずお固いですな。お父上ならばこのような美しい少女をを放っておくはずがございませぬ。武勇だけでなく色の道に関しても、もう少しお父上を見習った方がよろしいかと」
「それだけは勘弁してくれ。この府中八幡には父上もよくお出でになる。すでに凪に手をつけているやも知れぬぞ」
「本日より勤め始めた巫女ですぞ。いやしかしあのお館様ならば……」
「ははは、冗談だ。では凪。しかと励めよ」
義信、虎昌主従は軽口を叩きあいながら、館の方角へと歩き去った。
「十二になりました」
義信は凪に年を尋ね、あっさりと頷いた。虎昌が義信の後を引き取り口を開いた。
「なに、特に用があったわけではない。あまりに熱心に掃き清めているので声をかけたのだ。お前はきっと良い巫女になるだろう。邪魔をした」
「いえ」
去り際に虎昌が凪を見て目を細めた。ただそれだけで厳つい印象があっという間に好好爺へと変わる。
「お前はなかなかの器量良しでもある。早くこの目でお前の神楽舞を見たいものだ。さぞや見栄えの良い舞い手になるに違いない。きっと神もお喜びになるだろうて」
「おい、虎昌。鼻の下が伸びているぞ。喜ぶのは神ではなくお前だろう。確かに美しい少女だが、十二ならば孫よりも年下ではないのか」
「義信様は相変わらずお固いですな。お父上ならばこのような美しい少女をを放っておくはずがございませぬ。武勇だけでなく色の道に関しても、もう少しお父上を見習った方がよろしいかと」
「それだけは勘弁してくれ。この府中八幡には父上もよくお出でになる。すでに凪に手をつけているやも知れぬぞ」
「本日より勤め始めた巫女ですぞ。いやしかしあのお館様ならば……」
「ははは、冗談だ。では凪。しかと励めよ」
義信、虎昌主従は軽口を叩きあいながら、館の方角へと歩き去った。