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花菱落つ
第5章 裏切り
「父上は一体どうなされたのだ」

 いくら義元が死んだとはいえ、駿府は同盟国であり、信玄が父信虎に成り代わった時、一時的に信虎の身柄を預かってくれた国でもある。

「……お館様もすでに御年四十。少しばかり焦っておられるのやも知れませぬ。いつの日か京に上り、家名を天下に名を轟かせる。戦国に生まれた者が一度は見る夢にございます。戦には時間がかかるもの。なりふり構ってはいられぬのでしょう」

 人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。
 一度生を享け、滅せぬもののあるべきか。

 幸若舞「敦盛」の一節になぞらえ「人生五十年」と人は言う。父の人生があと十年だとすれば、父の焦りも理解できなくはない。八千歳の寿命を持つという化天に比べれば、五十年などまさに夢幻のように一瞬のことでしかない。時間はいくらあっても足りないくらいなのだ。

「あと十年。十年待てば……」

 父が亡くなるか隠居すれば、武田家の当主の座は義信の物になる。存命の弟が二人いるが、僧籍にある同母弟の海野信親は盲目であり、高遠にいる異母弟の勝頼は諏訪家を継ぎ諏訪勝頼と名乗っている。義信以外が当主になる可能性はないに等しいと言ってもいいだろう。
 だが信玄には隠居する気配が毛筋ほども見えず、病の兆候もない。不測の事態が起こらぬ限りは、亡くなるまで少なくともあと十年、武田の当主であり続けるだろう。

 ということは、義信が当主になるまで十年以上も待たねばならないのだ。
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