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『コミックサイトで逢いましょう』―番外編―
第2章 【第二部】 kiss・きす・キッス!
物心ついてからの母の思い出は、出掛けのキスと甘い香水の香りだけ。しっかり抱き締めて貰ったコトなど殆ど記憶にない。いつも忙しそうにしている後ろ姿ばかり追っていた。
ホントは淋しかったのかも。
でも、あの時は、そのことをさほど淋しいとも思わなかった。可愛くない子どもだな。
可愛がられる術を知らなかったのか。
(…誰…?俺を包み込んでいるのは…)
徐々に俺の意識が覚醒してくる。
(そうだ、耿輔と公園に来て…寝ちゃったのか…)
そこまで記憶が戻ってきたのに、何故か俺はそのまま動けずにいた。
余りにこの状態が心地良かったから。
俺を包み込むグリーンノートの香りは耿輔が付けているコロンの匂いだった。
眠ってしまった俺に自分のジャケットを被せて、そっと俺の肩を抱き寄せる耿輔。ヤツの肩の辺りに撓垂れた俺は、グリーンノートの香りと仄かな汗の匂いに包まれて、言いようのない安らぎを感じていた。