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堕天使 1st gig.
第11章 亡霊
家に帰るとリナは相変わらずのリナだった。胸の谷間が丸見えのタンクトップに尻が見えた超ミニのデニムパンツでアイスバーを咥えたまま

『おひゃえり…。』

と俺に言う。俺はそんなリナの顔を見て、やはり翔の事を考える。翔がリナにとって危険な存在になっているのだとすれば、俺は任務と割り切って翔に挑まなければならない。

そんな事をぼんやりと考える俺にリナが

『何かあったの?』

と不安な顔を始めていた。俺はリナにキスしてから

『仕事で疲れただけだ。』

と誤魔化していた。そのまま、風呂に入り、いつも通りにリナを抱えて夕飯を食う。相変わらず、リナとは別々に寝て、1人の布団の中で俺はやはり翔の事を考えていた。

翔と初めて出会ったのは、施設に入れられて俺が何度目かの脱走を試みた時だった。その時の俺は両親が死んだ事に納得が出来ず、馬鹿みたいに繰り返し施設を脱走しては家に向かって歩いていた。

だが、まだ子供だった俺は施設がある見知らぬ街を彷徨うばかりで、いつまでたっても自分の家に辿り着く事はなく、施設の職員に連れ戻されては殴られるを繰り返すだけだった。

その日も、俺は見知らぬ人に自分の家の住所を言い、その親切な人が俺の家の住所なら川沿いのもっと上流の方だと教えてくれた事に浮かれて俺はその川沿いの堤防を上流に向けて歩いていた。

そこで俺は翔に声をかけられた。初めての翔の言葉は

『お前…、馬鹿なのか?』

という言葉だった。翔は俺の3つ年上で既に中学生になっていた。翔は吊り目でキツい顔立ちの痩せた男だった。俺は翔に

『何がだよ?』

と一応いきがって答えていた。翔は

『言っとくけど、お前が行こうとしてる街まではここから車で1時間以上あるからな。つまり、お前はまた連れ戻されて殴られるだけなんだ。』

と言って来た。俺にだって決してもう2度と自分の家には帰れないという事実はわかっていた。ただ、職員に殴られるたびに絶対に帰ってやるという気持ちが湧いて来て意地になっていただけだった。

翔に言われて初めて自分の馬鹿な行為を認める悔しさに俺は唇を噛みしめて怒りに震えていた。
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