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堕天使 1st gig.
第11章 亡霊
絶対に泣かない…

それだけは施設に入れられてから俺が自分自身に課せた決まり事だった。だから、両親が死んだ事に対しても俺は絶対に泣こうとはしなかった。そんな俺に翔は

『お前…、口笛は吹けるか?』

と俺に見せるように両手の指を口に当てた翔が

ピィィィィッ!

と川に向かって響くように口笛を吹いていた。俺は口笛は親父から教えて貰って少し自信があったから少し自慢気に

『その程度?』

と片手を口に当て

ピィィィィッ!!

と翔よりも少し低い音を口笛で響かせていた。翔は

『なら、後は根性だけだけど、お前なら根性あるから、俺と一緒に来いよ。いつまでも馬鹿な事やってるより、施設でも有意義な生き方って奴を教えてやるからさ。』

と俺を連れて元来た方へと歩き出していた。俺は黙って翔の後について歩いていた。馬鹿な事を何度も繰り返して殴られている自分より、翔が随分大人に見えて翔なら自分を助けてくれるような気がしたからだった。

翔は施設には戻らずに怪しげな通りにある怪しげな喫茶店に俺を連れて行った。ゲーム機がテーブルになっているような薄暗い、汚い喫茶店の一番奥のテーブルには、如何にも怪しげな男が座っていた。

金髪に趣味の悪い紫の豹柄のシャツを着た男が翔に向かって

『まだ、ガキじゃねぇの?』

とどうやら俺の事を言っているようだった。翔は全く物怖じする様子もなく

『ガキの方が怪しまれないですよ。』

と答えていた。全く話しがわからない俺にその趣味の悪い男が

『とりあえず、こっちに座って好きなもん食えよ。』

と言って来た。翔がそいつの前に座って

『カレー…。』

と言ったから俺は翔の隣に座って

『同じでいいです。』

と答えていた。男は笑って

『カレー2つになんか炭酸のジュースでも付けてやれよ。』

と喫茶店の店員の男に言っていた。正直、俺はかなりの空腹だった。タダでさえ貧しく不味い施設の飯を俺は脱走したせいで、それすら食えない日もあった。

カレーの刺激的な匂いが俺の空腹を更に増幅させて

『食えよ。』

そう言った翔の言葉を信じて俺はがっついてカレーを食っていた。
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