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堕天使 1st gig.
第1章 記憶
いつもと変わらないはずだった…、いつもと違うと言える事は、仕事帰りに相棒の篠原 宗司が俺に

『明日は遅れないで下さい。わかってますよね?』

と母親みたいにわざわざ明日の予定を俺に言ったくらいだ。明日をいちいち考えたくない俺は宗司に

『んあ?』

と適当に返事する。俺がそういう態度を取れば宗司が不機嫌な顔に変わるのをわかっていて俺は面白がってそうしてやる。

俺よりも一回り小さく、しかも女みたいに白くて綺麗な顔が歪み、切れ長の綺麗な目が俺を睨む。

ただ、宗司にそういう顔がさせたいから俺はふざけてわざと適当に宗司に答える癖がついた。

それは、いつもと変わらない状況で俺にとっては当たり前の日々だった。

そうやって、俺のおふざけに怒る宗司を後にして俺は仕事先を出て、いつものように車で家に向かって帰っていた。

帰る途中もいつものようにコンビニでビールとミネラルウォーター、軽くツマミになるようなものを適当に買って、再び車で家に向かう。

世間様じゃ、まもなく日付けが変わるって時刻だった。家まで後数百メートルってとこだ。確かに、仕事帰りで疲れていたのは認めるが、前方不注意は絶対に認めない俺の車の前に、突然、白くふわふわとしたものが飛び出して来た。

反射的に俺はハンドルを切り、急ブレーキを踏んでいた。仕事明けだったから、俺は神経がビリビリしていた。幸いなのは俺の車に何かが当たった感覚がないって事くらいだ。

緊急停車した車のサイドブレーキを引き、イラつきながら俺は車の前を確認する為にゆっくりと車から降りた。

車から降り、まずは自分の腰にある拳銃の安全装置を解除する。

今は、そういう時代だ…。

それは職業柄、俺の身体に染み付いた習性だ。いつもと違う状況には絶対に油断はするな…、気を抜けばこっちがやられるんだと自分自身に言い聞かせる。

その反面、なんで仕事以外でこんな風に神経質にならなければならないんだ。そう思いながらもホルスターの銃に手をかけたまま、俺は車の前へと移動した。

ゆっくりと移動する俺に車の前のヘッドライトに照らし出されたものが少しずつ見えて来る。
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