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堕天使 1st gig.
第1章 記憶
始めに俺の視界に入って来たのは、ふわふわと緩い風に翻弄されたような人の髪、それは見事な銀髪で車のライトの光にキラキラと輝きを見せていた。

そこから俺が2歩も進めばその銀髪の正体が全身で俺の前に晒される。

背中まで流れるような銀髪が特徴的な小さな少女…。

そして薄汚れた白いブカブカのワンピースを着たその少女は迷惑な事に俺の車の前に俯いてへたり込むように座っていた。

冗談じゃねぇよ…。

未だかつて、人身事故なんぞ起こした事がない俺はこんな時間に車の前にフラフラと飛び出して来た少女に対してそう思った。

とりあえず、イラついたままの俺はまだ警戒はしたまま、少女に向かって

『大丈夫か?車に当たったか?怪我はないか?』

と声をかけてみた。一応、社交辞令的な言葉だが、少女だからといっても警戒だけは怠れない。

今は、そういう時代だから…。

と俺は自分に言い聞かせる。昔々、何十年も前の事だった。ある連中が自分勝手に自分達の思惑だけの国を作りやがった。ある連中とは、いわゆるテロリストと呼ばれる連中だった。

テロリストは世界を代表する大国や大国の友好国に対してありとあらゆるテロ行為を行った。そこから10年、20年…、と時が経つにつれてテロ国は巨大化し、そして大国に反発する国々までもがテロ国に加担する事態に世界は変化していった。

そして歴史上、起きてはならない大規模テロが起きてしまった。世界中での同時多発テロ…。年に1万件は起きていると言われていたテロがその日に一斉集中したような日だった。

とうとう、ブチギレた大国とその友好国はほぼ無理矢理にテロ征伐の為の国連軍を設立し、テロの国、及びそのテロに加担する国々への一斉攻撃を開始した。

それが俗にいう世界大戦の始まりだった。その頃の日本はまだ軍を持たず、日和見主義で平和主義を貫く予定だったから、日本は大国任せで世界大戦は傍観を決めていたはずなのに

『国連軍でない国はテロ加担国と見なす。』

と突然、大国からの三行半を突きつけられる状況に陥った。大国に見放された日本は世界中からテロ加担国として経済制裁なる処置を受け、経済大国日本は一気に貧困大国日本へと変貌するのにさして時間はかからなかった。
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