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堕天使 1st gig.
第15章 温泉
こういう顔されて食うなとは絶対に言えない…

食事が全て用意され、中居さんが部屋から出て行くと俺はリナを膝に抱えて

『とりあえず、俺にビール、後は好きに食え。』

と言ってやる。リナは少し落ち着かない様子だが、それでもいつものようにご機嫌で飯を食っていた。

飯が終わり、食事が片付けられ、布団が敷かれるとリナははしゃいで布団に転がり

『アルト、アルト、至れり尽くせり!』

と笑っていた。俺は窓際のソファーでビールを呑みながら、窓の外のまだ降り続く雪を眺めていた。

普段と掛け離れた日常にリナといるのが嘘のように感じていた。そんな俺にリナがつけたテレビがまた俺をいつもの日常に呼び戻す。

画面には当野池…、コイツの顔を見るたびに俺はまだ任務中の気分に叩き落とされてしまう。

『アルト!?』

そう叫ぶリナが俺の隣にいた。

『んあ?』

『仕事…、本当に終わったんだよね?』

『ああ…。』

『なら、なんでそんな怖い顔するの?』

リナが不安そうに俺に聞いていた。仕事は間違いなく終わっていた。ただ、俺は当野池が怖かった。平気で家族を人質にして家族の愛情を利用した当野池みたいな奴がリナに何かしたらとか考えるのが怖かった。

そして、施設上がりの俺も、もしかしたら当野池のようになっていたかもしれないのが怖かった。俺だけじゃなく誰もが当野池になる可能性がある事実を理解した事が怖かった。

俺と当野池の違いは俺には翔が居た。翔が居なくなった後も宗司が居て、雄太達が居た。そして、今はリナが居る。

立場が変われば俺は当野池側に居たかもしれないと感じる自分が怖かった。だが、俺は当野池みたいな人間に怯える側の人間になっていた。俺は

『お前をどうやったら守れるかがずっと頭から離れないんだ。』

とリナに言っていた。当野池の顔を見るたびにリナをどうすれば守れるかと俺の悪い頭はそれだけでいっぱいになってしまう。リナはただ穏やかに笑って

『アルトは負けない。誰にも絶対に負けない。』

と言っていつものように俺の頬にキスしていた。
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