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第28章 謝罪

雨が止み、夏になり、気温のせいでリナが俺に近寄らないと言いたいところだが、それ以前にリナが俺と全く口を聞かなくなっていた。

事の起こりは１週間ほど前だった。仕事帰りにリナに頼まれた買い物して帰った俺は家の前に立っている五十嵐の副官、つまり岩本中尉を発見した。

嫌な予感がする…

とか考えながら俺は家の車庫に車を停めて岩本に

『何しに来た？』

と聞いていた。岩本はただオロオロとし

『すみません、すみません…。』

を繰り返す。イライラする俺は

『だから、なんだと聞いているんだ。』

ともう一度根気よく岩本に聞いていた。岩本は泣きそうな顔で

『サイン…、貰う書類を私が忘れてたから、皆さん帰れなくて、だから私が責任持って少佐から貰って来るって言ったんですが少佐がもう本部にはいらっしゃらなくて…。』

とよくわからん説明を始めていた。要するに２課のサインが必要な書類を俺に岩本が出し忘れ、１課の１部の人間が未だに帰れなくなったという話しらしい。

『サインならしてやるから、さっさと書類とペンを寄越せ！』

と俺に岩本が手を差し出した瞬間、何を思ったのか岩本は後ろに後さずり、更に何故か知らんが何もない道路につまづき、後ろに向かって無防備のまま岩本が倒れようとしていた。

『危ねっ…。』

と俺が岩本の腰を掴んで引き寄せると岩本が目を見開き俺に掴まっていて、何故かそうやって家の前で岩本と抱き合っている状況を、車を停めてもいつまでも家に入らない俺の様子を見に来たリナにしっかりと見られる羽目になり、美優を抱いたリナから

『何やってんの、家の前でみっともない…。』

と俺は言われる羽目になっていた。

『だから、さっさと書類を寄越せ！』

とこの状況を誤魔化すように俺は叫び、岩本はひたすら

『すみません、すみません…。』

と繰り返し頭を下げているという有り様だった。その夜からリナの不機嫌が始まり、飯の時も

『暑いから嫌よ…。』

と全く俺に近寄らないリナがそこに居た。