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堕天使 1st gig.
第31章 自由
じい様は少し驚いた顔で

『なるほど、婦人会の方がよくわかっとるな。』

と笑っていた。兵舎の限られた空間での限られた情報よりも、外の婦人会の方が情報が広いという事だけは理解した。

演習後半…。

まずは海からの上陸作戦などが実戦型で行われる。上陸が無事に済めば進軍して相手の防衛ラインを突破するのが1日交代で行われる。

2日目は俺は防衛ライン側だった。高橋が自分の配置ポジションの書類を見て

『ありえねぇ…。』

と俺に言って来た。俺も

『嫌がらせだろ?』

と高橋に答えていた。高橋のポジションは後方左翼、俺は後方右翼のポジションだ。このポジションは敵に攻め込まれた時にお偉方の本部が逃げる時間を稼ぐ為の捨て駒的ポジションだ。

つまり俺達の前まで敵が来れば、本部は撤退を余儀なくされる状況であり、それは演習では敗北を意味する事になる。

高橋のように防衛ラインに秀でた指揮官には中間防衛ラインを引かせ、本来なら攻撃型の俺は高橋の前に出るべきなのだ。

『上は何考えてんだ?』

と言った俺に宗司が

『本部の撤退は100%ないという意思表示でしょう。』

と言って来た。つまり、もし、敵が俺や高橋のラインまで到達しても、高橋と俺で敵を絶対に叩き潰せという命令になっているという事だった。

高橋はひたすら

『迷惑な作戦だ。』

とボヤキ、俺は絶対に貧乏くじの嫌がらせだと思っていた。

最終防衛ラインの俺らの前にはなかなか敵が現れる事はなく、ジリジリと照らす太陽を浴びながら動く事も全く出来ないまま、汗だくでひたすら待ち続ける防衛戦。

『水分補給だけ、とにかく気をつけろ。』

と俺はひたすら負傷兵を出さない事だけに気を配り、この嫌がらせのような任務を1日置きにやる羽目の後半戦だった。

要するに、軍の上には俺や高橋みたいな奴に楽に手柄を上げさせたくない連中が山ほどいるという事だけが俺達には身に染みた演習後半戦だった。

そして、最終日、日本は大国に続く2位という結果に満足し、一応、この演習で優秀な成績だった軍人は表彰され演習は無事に終わっていた。
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