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堕天使 1st gig.
第32章 防衛
但し、それはあくまでも俺が対テロを退くかもしくは戦死した場合の話しだ。俺が対テロの道を選んだ段階で羽賀の対テロへの道は閉ざされている状況だった。

閉ざされているといえば、現場も同じだった。現状報告では現在の中の様子は全く確認出来ず、赤外線センサーでかろうじて確認出来たのは1階と2階に武装集団もしくは人質が分散されているという報告だった。

ご立派なコンクリート建ての豪邸と言える一軒家。防犯対策の為に施されたシステムが今は武装集団を守る為に使われており、最悪の状況だった。

まず、窓という窓はシャッターが降ろされ、中の様子が全く確認出来ない事。庭が広く、こちらが迂闊に近寄れば、防犯センサーとカメラによって中から確認される事。

しかも人質が分散されている場合、片方を救出出来てももう片方が殺られる危険性がある以上、下手な突入は出来ないという状況だった。

庭までの距離、庭から玄関までの距離、裏口の距離、俺はスコープを覗きながら見える範囲の情報をかき集めている状態だった。

そんな俺に羽賀は

『ムービートラップは考えてるの?』

と聞いて来た。俺は

『当然だ。』

と答えていた。相手がプロならこちらの突入に備えて侵入口には仕掛けを間違いなくしていると警戒する必要がある。

だが、武装集団は自分達の逃走経路の確保も必要だから、そちら側にはトラップはないと俺は踏んでいた。その逃走経路が表側か裏側かを判断するのも俺の役目だった。羽賀は

『十中八九、逃走経路は裏側よね。』

と俺に言っていた。俺は

『何故だ?』

と聞いていた。羽賀は

『距離を考えればわかる事よ。』

と言っていた。

『だから何の距離だ?』

『逃走する距離よ。道路に出て仲間と合流するにも何で逃走するにも、表のあの広い庭を横切るとか狙撃を考えたらリスクがあり過ぎるでしょ。』

羽賀はそれが当たり前だろうと苛立って俺に言っていた。俺は

『別に庭なんぞ横切る必要はない。あの玄関横の馬鹿デカい駐車場裏には下水用の昇降口があるからな。そこから暗渠に入れば済む事だ。あの場所は狙撃の死角になっている。』

と羽賀に答えていた。
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