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【Onlooker】~サラが見たもの~
第3章 イケナイ、男(ひと)?
※ ※
同ホテルのロビーにて――。
「はあ……暇だ」
ソファーに深く座り込み、堪えきれないとばかりに黒木は呟いた。
振り返れば紅谷零子に誘われオンルッカーに所属してからというもの、この黒木という青年の仕事は『待つ』ことがその大半となっている。
同世代の若者たちのように、スマホを何時間でも弄っていられるような男ではなかった。黒木はどちらかといえば、時間を潰すことに長けてはいない。
こんな時は大抵、車で居眠りをして過ごすのが通例である。が、今日は昼にもそうしていたから、現在はばっちりと目が冴えてしまっていた。
俺、いつまでこんなことしてるんだ?
もう何百回レベルで繰り返された自問に、しかしその答えがまだ自分の中に用意されていないことも、嫌と言うほどわかっていた。
黒木は何気に利き腕である左手の甲に描かれた、ドクロのデザインのタトゥーを見つめる。
「ん?」
そうした時に掌の向こうで、ホテルのボーイの訝しげな様子を見つけた。黒木はやれやれといった感じで、ソファーから立ち上がる。
自分が周りからどの様に見られているのかは、概ねわかっていた。
ツンツンと鶏冠(とさか)のような金髪の頭も。片耳に穿ったピアスも。キャバクラのボーイ時代に「目元が可愛いんだね」と店の女にからかわれて以来、愛用するサングラスもそうであろうし。そして、左手のタトゥーだって……。
「お前、その恰好――もう少しなんとかならなかったわけ?」
さっき、ちんちくりんの白隅サラに言った言葉は、そのまま自分に跳ね返ってくる。実はあらゆる場所に於いて、そこに相応しくはないのは寧ろ自分の方だった。
それが自分自身のせいであることも、わかりきっていること――しかし、それでも。