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【Onlooker】~サラが見たもの~
第3章 イケナイ、男(ひと)?
※ ※
紺野涼と美女とのセックスを、オンルッカーとして見届けた――サラ。
そのホテルの部屋の雰囲気は、さっきまでとはまるで様変わりしていた。
「さ、コーヒーをどうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
サラは、ほぼテーブルの上に置かれたカップに向かってお辞儀をしている。それを差し出した紺野涼の顔を見ることができなかった。
テーブルを挟んだ向かいの椅子に座り、紺野も自らのカップを口に運んでゆく。そうして一息つくとまだ緊張気味に俯くサラを見やり、ふっと微笑んだ。
「今夜は、ありがとう」
「え? いえいえ……私なんて、なんにも」
サラは礼を言われたことに驚くと、顔の前で両手を振った。自分なんて、なんにも。謙遜ではなく、本当に自分がなにかの役に立てたなんて思ってはいない。
しかし――
「お嬢――じゃなく、白隅サラさん、だったね」
「え? ――は、はい」
名前をフルネームで呼ばれたことも少し嬉しかったが、もう「お嬢さん」と呼んでくれないとしたら、それも少し残念に感じる。
「サラさんは僕のことを、一生懸命に見ていてくれていたね」
「それは……まあ、私なりには……ですが」
「それで、見ていて――なにか、感じた?」
「見て……感じたこと?」
サラは問われたことを、そう繰り返し。すると、その瞬間『見る』という一点において一番印象的な場面を、ふと思い浮かべてしまった。
「とりあえず、二人だけにしてくれないかな」
それは、女との行為を終えた紺野が、ベッドで言った言葉。
それを耳にした時に――
「あ、じゃあ――私は、これで」
サラがそう言って慌てて席を立ったのは、先の紺野の言葉が自分に言ったものだと思ったからだった。
それは、無理もなかろう。クライアントのセックスが終われば、オンルッカーとしての役目はそれまでだ。
しかし実際には、その十分後――。
「それじゃあ、帰るねー」
若干ピリリとした不機嫌さのオーラを纏い、そう告げたのは、さっきまで紺野と身体を重ねていた女の方だった。