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【Onlooker】~サラが見たもの~
第3章 イケナイ、男(ひと)?
※ ※
その一場面はまさに、ドアを一枚隔てただけのホテルの通路。サラと紺野の居る部屋の外には、黒木の姿が――。
咲花から話を聞かせれ、ともかく慌てて駆け付けていたのだ。
「まったく……あの女、面倒かけやがって。つーか、あのイケメン野郎も、一体どういうつもりだよ?」
黒木は悪態をつきながら、紺野から預かっていたカードキーを懐から取り出す。それでドアを開けようとするが、ふとその手が止まる。
「いくらなんでも、いきなり開けるのは不味いか……」
そう言いつつ、今度は左手でドアをノックしようとする。が、またしても――
「けどよ……相手の女が帰ったんなら、今は一応はプライベートな時間ってことになるのか……?」
黒木は自らそう独り言を口にしながら、ノックするのを躊躇してしまった。
「いやいや、それだとおかしいだろ。じゃあ俺は、いつまで待ってなきゃいけねーんだよ」
黒木はそう言い、今度は苛立ちを覚えたその勢いのままにドアを叩こうとする――が、やはり叩けずに、その手を寸前でピタリと止めた。
「ハッ……ホントに、なにしてんだよ……俺は……?」
黒木は何故そんなにも、自分がイライラしているのか、その理由がわからなかった。只、一枚のドアを隔てた部屋の中に想いを馳せた時に、なんとも言いようのない焦りを覚えてしまう。
そんな時に――
『この子、とってもいい子なのよ』
不意に思い起こされたのは初めて白隅サラと会った時に、零子から言われた言葉だった。
「ああっ、なんなんだよ……」
黒木はそれを振り払うかのように、強く頭を左右に振る。
「女なんて、結局は同じだろ? アイツがどうしようが、俺の知ったことかよ」
そう吐き捨てるように言うと、黒木はそのドアの前から去って行くのだった。