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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
その刹那、しーんとした空気が狭い室内を包み込んだ。その雰囲気に焦りつつも、サラは続けてこう訴えてゆく。
「い……いきなり、失礼しましたっ! でも、もしそうなら、私にはできません」
「それは、何故?」
「理由は、その……」
返答に困っていると、零子は不意にこんな風に言った。
「それにしても――貴方って、素敵なお名前よねぇ」
「え、そうですか。特に言われたこと、ありませんけど」
「そうよ。だって、しろくまっさら――なのよね?」
「はぁ?」
「その名前が示す通り、きっと貴女は処女なんじゃない?」
それを言い当てられてしまい、サラは自分の頬が紅潮していく様を感じる。
「ち、違います! 『しろくまさら』ではなく『しらくまさら』ですから!」
恥ずかしさを誤魔化すように、語気を強めて些細な一点を訂正するのだが。
「あら、それは失礼――だけど、処女は処女なんでしょう?」
「ああん、もう! なんなんですかぁ! そんなに処女処女って、何度も連呼しなくたって……」
思わず頭を抱えて、大きな声を出した。
そちら(処女であること)の方は、どうやら否定しようもない。見るからに経験が豊富であろう零子の目は、欺けないものと観念した。
「と、とにかく、そんなわけでもありますから。もし、風俗のお仕事だというなら、私には――」
「だから、何故なの?」
零子は尚も、そう問い直す。