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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
「使命感?」
そう顔を仰いだサラに、紺野ははっきりとした口調で告げた。
「妹の姿、その物語を――僕の手で、舞台の上に蘇らせること」
「……」
「しかし、それを決意した途端に、僕は見えない大きなプレッシャーに苛まれ始めていた。その結果どうなったのかは、サラさんも見た通りだよ」
イケない――すなわち、射精することができない。
サラはそこに至るまでの心因を、紺野涼の話からおぼろげながら理解することとなっていた。だが、それがわかった処で、自分からかけるべき言葉が見当たらない。
そんな想いのある紺野が、サラの眼差しに求めるもの。それがまだ、まるで見えない。
すると、そんなサラの内心を見透かしたように、紺野は言った。
「今のサラさんの眼差しは、僕の妹と似ている――いや、同じだと感じた」
「え?」
「とても、虚ろで――とても、儚い」
「……」
サラは、何処か得心できずにいた。
しかしそれは、紺野が自分の妹の姿に、サラを重ねたことに対してではなく。紺野の言い表した言葉が、自分には似つかわしくないのだと感じたのだ。
以前、ラブドールのヤマダも、同じくサラの瞳を自身の婚約者と重ね合せていた。だが、あの時とは明らかに、その意味が違っていて。ヤマダは単に、そこに『純真さ』を感じてのことであり、その点でサラが不思議に思う理由はなかった。しかし――
虚ろで……儚い?
「……」
今、部屋に戻り改めて考えてみても、まるでピンとはこない。
紺野涼が自分の眼差しの中に見つけたもの。それにサラは激しい違和感を覚えるしかなくて。その言葉は自分には、やはり似つかわしくないと思うしかなかった……。