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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
『君のその瞳で、僕のことだけを――見つめていてほしい』
その言葉と、それを告げたイケメンさんのイメージが、サラの脳内をバラ色に彩る。
結局、それに返事はできなかったけれど。だからこそ、紺野涼が自分を繰り返し求めて指名する可能性もあるのでは、なんて都合の良い想像をしてしまっている。
だから前回を踏まえ、せめて少しはオシャレな姿でと思うのだった。
「ダメだよ。そんな、浮かれてばかりじゃ……」
サラはそっと、鏡の中の自分を戒める。
紺野の事情を鑑みれば、会えることに喜んでるばかりじゃいけない。自分のこの眼差しが、彼の癒しになるのか、或いはその逆なのか――ともかく、どうにか役立ってみせなければと思うから。
その前に、自分と彼は――単なる、オンルッカーとその顧客なのか――?
と、そんな思慮をする内――。
パッパァー!
アパートの外で、ベンツのクラクションがけたたましく鳴り響いていた。
「もう……近所、迷惑じゃない」
そう呟いたサラは、もう一度姿見の自分を見つめ。それから、仕方ないという顔をすると、ハンドバッグを手に急いで部屋を飛び出して行った。