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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
「ど、どうも……」
ベンツの運転席から苛立った顔を覗かせる黒木に、サラは目を逸らしながら挨拶のお辞儀。なんとなく所在無く、スカートの前を押さえている。
そんな態度が余計に気に入らない様子で――
「ちっ……さっさと乗れよ」
黒木は舌打ちをしつつ、サラをそう促した。
後部座席に乗り込み車が走り出すと、サラと黒木の二人の空間は会話もなく、時間が過ぎるほどに気まずさだけが充満してゆく。
しかしサラの居心地が悪いのは、なにもそれだけではなくて。座席で初めて気がついていたのは、座った時にミニワンピの丈の短さが一層に際立ってしまうこと。
「……」
サラはもじもじとスカートを片手で押さえながら、ルームミラー越しに黒木の視線を意識する――と。
「見てねーから」
サングラスの黒木は言って――
「大体、そーゆーの。似合ってねーよ、お前に」
それを耳にしたサラは、自分の眉間の辺りではっきりと『カチン』という音がしたのがわかった。その心境を端的に言い表すのなら。
コイツ、ムカつく! と、なってしまうわけであり。
「ええ、どーせそーなんでしょうね! でも、私だって一応、女の子ですから。カワイイ恰好くらい、してみたいって気持ち――あります!」
「ああ? 急に、なんだよ」
二人が口論に発展してしまうのは、自然な摂理であるのだろうか――。