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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?

「大体、この前は――めっちゃ普段着だって、バカにしてたクセに!」

「別に、バカになんかしてねーだろ」

「してました! 恥ずかしくて連れて歩けないとか、言ってましたもん。だから、私も――」

「だからぁ?」

「え?」


 黒木の声のトーンが変わり、サラの勢いが止まった。


「違がうんじゃね―の? お前が、そんな恰好してきた理由は」

「そ、そんな……特に、理由とか……」


 頬をほんのり朱色に染め一気にたじろぐサラに、紺野は意地悪い口調で言う。


「でも、当てが外れて残念! 今日の指名客――あのイケメンじゃねーから」

「――!」


 サラは顔面が、かあっと熱くなった。赤面したのとは違い、今度ははっきりと頭に血が上った感覚がある。その昂ぶった感情のモードは、総じて言うのなら『怒り』であった。

 しかも、より明確な。

 指名したのが紺野涼であったのなら、という期待は確かにあって。そうでないと知った今、そこには失望が漂う。だが、それ以上に――。

 自分をドキドキさせるイケメンさんの前で、少しでもカワイイ姿の自分でありたい。と、そんな気持ちを嘲笑われた気がした。土足で踏みにじられたと感じた。

 だからこそサラは、この怒りを自分でも制御できなくなってしまう。

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