この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
「大体、この前は――めっちゃ普段着だって、バカにしてたクセに!」
「別に、バカになんかしてねーだろ」
「してました! 恥ずかしくて連れて歩けないとか、言ってましたもん。だから、私も――」
「だからぁ?」
「え?」
黒木の声のトーンが変わり、サラの勢いが止まった。
「違がうんじゃね―の? お前が、そんな恰好してきた理由は」
「そ、そんな……特に、理由とか……」
頬をほんのり朱色に染め一気にたじろぐサラに、紺野は意地悪い口調で言う。
「でも、当てが外れて残念! 今日の指名客――あのイケメンじゃねーから」
「――!」
サラは顔面が、かあっと熱くなった。赤面したのとは違い、今度ははっきりと頭に血が上った感覚がある。その昂ぶった感情のモードは、総じて言うのなら『怒り』であった。
しかも、より明確な。
指名したのが紺野涼であったのなら、という期待は確かにあって。そうでないと知った今、そこには失望が漂う。だが、それ以上に――。
自分をドキドキさせるイケメンさんの前で、少しでもカワイイ姿の自分でありたい。と、そんな気持ちを嘲笑われた気がした。土足で踏みにじられたと感じた。
だからこそサラは、この怒りを自分でも制御できなくなってしまう。