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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?

 『大人の女』という場所(ステージ)の入口があったとして。あの白隅サラという女は、その入口のかなり手前にその所在を確認することができた。少なくとも初めに、零子に連れられて来た、その姿を見た時はそうに違いなかった。

 其処に留まっている以上、黒木はサラに好感を抱くことができる。

 だが、オンルッカーになって以降。サラは確実にその場所に近づき、そして今日見た彼女は自ら興味津々にその入口を、そっと覗いているようにさえ感じた。

 考えようによっては、それこそが女性としての自然な成長であるのだろう。だが、黒木にしてみれば、それは気に入らないことだった。

 もちろん、自分がそこに干渉できる立場であるあけもなく。だから、嫌がらせのような文句を並べてみても、結果が同じなのはわかりきっている。

 いつしか自分の前を、羽を広げたサラが艶やかに舞って行くのだろうと……。

 あくまでも、それがちょっと口惜しいだけ。たとえ、今の白隅サラに好感以上の気持ちを抱きつつあることを、素直に認めたとした処で。

 同時に、自分では彼女をどうにもできないことは、それこそわかりすぎているから。


「――!」


 その時、黒木のスマホが普段とは異なる、不穏な音を奏で始めた。


「ちっ……こんな時に限って」


 白隅サラに持たせた防犯ブザーが、緊急の事態を報せてきている――ようだ。

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