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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
※ ※
マンションの部屋に招かれていたサラは、勧められた座布団の上にちょこんと鎮座すると、所在無く周囲を見回した。
「……」
なんというべきか――その室内の印象は、至極飾り気のないもの。だが、それも良く言った方であり、とにかく調度品等、物が少な過ぎるように思う。
サラの座る前に、小さなテーブルが一つと壁際にはシンプルなベッドが一脚。それ以外はテレビや電化製品が直接、床の上に乱雑に置かれている。
所々、打ちっぱなしのコンクリートがむき出しなのは、ひと昔(以上は)前のデザイナーズマンションといった風情も辛うじて残す。
が、それ以上に先に述べた飾り気のなさがガランとして寒々とした雰囲気を醸し出した。
「そんなに警戒しなくても、大丈夫だよ」
背中越しに声がして、サラは思わずビクリとする。ゆっくりと振り向き――
「あ、いえ……私は別に」
「そう? まあ、これでも飲んでなよ」
サラを部屋に向かえていた青年は、トレイの上にのせていたマグカップをテーブルの上に置き、それをサラに勧めた。香り立つコーヒーは、その色から既にミルクとおそらくは砂糖も入れられているように感じた。
「あの……どうか、お構いなく。それより、パートナーの方は、まだ?」
「ああ、ごめんね。時間はちゃんと言っておいたんだけどなあ……。でも、大丈夫。連絡があって、あと十分もあれば到着するって」
青年は前髪を自然に垂らしたシンプルな髪型。その下の両目は終始にこやかに波打っているけど、その分その感情は読みにくいように思えた。
「そう、ですか」
「うん。だから、もう少し待ってね。ほら、コーヒーをどうぞ」
「はい……」
サラは仕方なく、出されたマグカップを口に運んだ。やはり、砂糖は入っている。それも、この甘さから察するにかなり多量だ。
「……」
サラがコーヒーを口にした横顔を見て、青年は目元に留まらず口元の口角をもくっと吊り上げてゆく。