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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
クライアントである青年のパートナーが、まだ部屋に来ていないという説明があった。サラはやむを得ず、することもなくその到着を待つ。そうして、それは――
あれ……?
出されていた甘いコーヒーを、二口三口と口にした後のことだった。
「どうか、したの?」
サラが違和感を覚えてこめかみの辺りを抑えると、青年がそんな風に訊ねてくる。
「あ、いいえ。でも、なんか……変だな」
頭がぼんやりとする。仕事に来ているという緊張感は持っている筈なのに、何故か急激な眠気を感じた。
「もしかして、具合でも悪いの? よかったら、ベッドで少し横になってもいいんだよ」
青年の優しげな声が、やけに遠くで聴こえた気がする。
「と、とんでもないです。そんなわけには――」
「だけど、その様子じゃ……」
「すみません……。では、ちょっと洗面所をお借りしてもいいでしょうか?」
「もちろん。その先だよ」
指で指された方へ、サラはおぼつかない足取りでなんとか向かった。そして辿り着いた洗面台の前で、とりあえず自分の顔を見つめる。
「もう……仕事先で寝ぼけるだなんて。しっかり、しなさいよ」
ポンと両手で頬を張ると、サラは蛇口を捻り冷水で顔を洗おうとして、頭を下げた。
その瞬間――鏡に新たに映し出されたのは、サラの背後に立つ、大柄の男の姿。
ニイ……。
その男は――さっきの青年とは違って。あからさまな笑みを浮かべると、嫌らしい目つきで眼前のサラを見下ろした。