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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
特に坊主頭の大男は、あからさまにニヤニヤと下品に笑い、サラに目掛けて歩み寄ろうとしている。
その肩に、ポンと手を置くと――
「まあまあ、そんなに焦らないでくださいよ」
優男が、なだめる口調で言った。
「ケッ、テメーなんかとイチャついたせいで、背中の辺りがムズムズと気色悪くて仕方ね―んだよ。早く口直し、させろぉ」
坊主頭の視線が下がったのに気づき、サラは咄嗟のことでやや開き加減にしていた両太ももを、慌ててピタリとつけた。
その所作さえも、たまらない、といった様子。男は右手で、じゅるりと口元を拭った。
「それはお互い様。とにかく、手荒な真似は控えてください」
それまでサラは、正直言ってそこまでの危機感を抱いてはいなかった。
なにしろ、展開が急すぎること。二人がゲイカップルであると信じ疑ってないこと。それに加え、やや眠気に苛まれたせいもあって、この男たちが何を話しているのか、その意味を上手に咀嚼できずにいたのだ。
が――次の優男の言葉が、そんなサラをハッとさせることになる。
「意識がある内は、なにかと面倒でしょう? もう少し待てば、彼女だって大人しくしてくれるはずですよ」
もしかして、この眠気は……?
サラが視線を送ったのは、飲み差しのマグカップ。妙に甘すぎたコーヒーは、なんらかの混ぜ物の味を誤魔化すために――?
「……」
ゴクリと、唾を飲み下す。一気に、サラの緊張感が募った。