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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?
サラは二人の男の動きを注視しながら、左手でそっと右手首を探る――が。
あれ、ない……!
サラが探したのは、黒木に持たされている――防犯ブザー。
『コレだけは、いつでも押せるようにしとけよ』
それは最初にそれを持たされた時の、黒木の言葉である。その忠告に倣い、ストラップで右の手首にかけていたはずであったが……。
あ……!
どうやら先ほど吹っ飛ばされた時に、落としてしまったようだ。サラは坊主頭の足元の近くの床に転がっているブザーを見つけていた。
なんとか気づかれる前に、アレを押さなくちゃ……。
壁に両手をつけ、上体をやや前のめりにする。ゆっくりと足を踏ん張り、素早く動き出せるように体勢を整えようとしていた。
だが、その準備も虚しく。
「んん?」
坊主頭は足元のブザーに気づくと、なんの気なしに拾い上げてしまった。
「くっ……!」
遅かった。と、顔をしかめるサラだったが。
不幸中の幸い。男の方は、それがなんなのか、まるで見当がついていなかったようだ。
「なんだよ、コレ?」
――カチ。
男は無造作に、そのボタンを押した。