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【Onlooker】~サラが見たもの~
第1章 見るだけの、お仕事?
※ ※
黒塗りのベンツの後部座席。夕暮れの街並みが、ゆっくりと車窓を流れて行く。
「……」
黙って俯いたまま、チラリと隣に座る零子の横顔を仰いだ。堂々としている零子の佇まいは、高級車の後部座席によく似合って見えた。そのまま運転席に視線を移す、と。
車を運転するのは、濃紺のスーツを身に纏う男。金髪がツンと立った髪型。目元を隠すサングラス、それと片耳のピアスが目につく。やや視線を下げると、ハンドルを握る手の甲には、ドクロのタトゥーが入っているのがわかった。
斜め後ろより見る頬の肌艶やシャープな顎のラインから、おそらく自分とそう変わらない年齢では、と思うが。サラとは顔を合わせようとしない。どうも無愛想であるらしく、まだ言葉さえ発してはいなかった。
とても仲良くできそうなタイプとは言い難く、少なくとも今まで周囲にいた男友達とはまるで違っている。
チャラチャラしてるというより、明らかな不良タイプだ。
運転手の男から漂う空気が、更にサラを不安にさせた。すると、まるでその心中を察したかのようなに、零子は無愛想な運転手に代わって、言った。
「彼は、黒木くんよ。もしサラちゃんが働くようになれば、送迎を始め色んなフォローは彼がしてくれることになるの」
「あ、そうなんですか。どうぞ、よろしく」
まだ働くか決めてないけど。そう思いつつ、とりあえず頭を下げるが。