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【Onlooker】~サラが見たもの~
第4章 安堵させる、左手?

 優男が下から上に一閃したナイフの切っ先が、黒木の頬をかすめサングラスを跳ね上げた。

 身を仰け反るようにして、それを躱した黒木は――


「知らねーなら教えてやる。土下座のやり方は――こうだっ!」


 ナイフを躱すと同時に大きく振り上げていた、ドクロの左拳。それを渾身の力で、打ち下ろす――。


 グシャッ!


 ハンマーの如き一撃に頭部を襲われた優男は、ヒキガエルよろしく顔面から床に平伏した。その姿はまさにベッドの上のサラの前で、土下座するかのように――。


    ※    ※


 その後、意識が飛び、サラが再び気がついたのは走行中のベンツの中だ。だけど、それはいつもの後部座席ではなくて、助手席。

 だから隣には、運転する黒木の姿があった。前を見る横顔を見て、ふと呟く。


「あれ……? サングラスしてない」


 黒木はそれを耳にし。


「なんだ。起きたのか?」

「うん……それで、サングラスは?」

「ああ? 夜は流石にしねーよ。つーか、さっきのナイフ野郎のせいで壊れちまったしな」


 そっか……今までも夜はしてなかった?

 サラはそう思いながら、そんな時はいつだって黒木は自分の方に顔を向けてなかったのだろう、と考えた。

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